ウェディングドレス 販売の信用性
この想定は誤りだった。
なぜなら、既発債のほとんどが信用取引で保有されていたのに、信用供与枠の更新ができなかったからだ。
資金調達の不足分を埋める必要がある。
もし一般大衆が預貯金を引き出しにかかったら、この不足分はさらに拡大するだろう。
最善の解決策は、一五,二五%程度の小幅な通貨切り下げを行った後、通貨評議会制を導入することだ。
切り下げが必要なのは、原油価格の低下分を調整し、通貨評議会に必要な外貨準備高を引き下げるためである。
切り下げには、ルーブル建てロシア国債の保有者にペナルティを負わせ、救済の負担を軽減する効果もある。
M(狭義のマネーサプライ)をまかなうために二一○億ドル、来年の国債借り換えの際の不足分を補うために二七○億ドル、合わせておよそ五○○億ドルの外貨準備高が必要とみられる。
ロシアには一八○億ドルの外貨準備があり、IMFが一七○億ドルの支援を約束している。
通貨評議会を実現させるためには、G7諸国が残りの一五○億ドルを拠出することが必要となる。
銀行の救済は行われない。
一般大衆の預金を預かる一、三の金融機関を除き、銀行は自力でやっていくことになるだろう。
国債の価格はただちに持ち直し、健全な金融機関は生き残るとみられる。
ロシア国民はおよそ四○○億ドルの外貨を保有しており、通貨評議会制が導入されれば、魅力的な利回りのルーブル建てロシア国債を購入する気になるかもしれない。
そうなれば、G7のスタンドバィ・クレジット(イザというときの資金引き出し信用供与)は、使わずにすむだろう。
金利が低下すれば、政府は財政目標を達成しやすくなるはずだ。
G7にただちに一五○億ドル拠出する用意があるのなら、通貨評議会制を導入しなくても、状況を安定させることは可能である。
ただし、もっと時間がかかり、ダメージが広がるかもしれない。
通貨評議会がなければ、限定的な通貨調整を行なうこともむずかしくなろう。
一九九四年一二月にメキシコで起きたように、通貨の一層の切り下げを求める圧力が抗しがたいものになるからだ。
行動が遅れれば、救済にかかるコストは膨らみ続けよう。
一週間前なら、わずか七○億ドルのコストですんだはずなのだ。
残念ながら、国際金融当局は事態の緊急性を認識していない。
行動を起こさなかった場合、行き着く先はデフォルトかハイパー・インフレである。
どちらにしても、金融と政治に破滅的な結果をもたらすだろう。
私が「フイナンシャル・タイムズ」への投書を書き終えた後、ロシア率の中央銀行副総裁が、ルーブルの交換性に部分的な規制を課した。
これは、ロシア市場に壊滅的な打撃を与えた。
株式市場は寄り付きからいきなり一五%下げ、反発も弱かった。
私の投書は大きな関心を呼んだが、関心の焦点は、通貨評議会制の提案ではなく、ルーブル切り下げを提唱したことに集中した。
そのことが、後にブラック・サーズデーと呼ばれることになる市場の暴落を誘発した要因のひとつになった。
私の意図は完全に裏目に出てしまった。
ロシア金融市場の混乱は、私の言動が原因ではない。
われわれは、ルーブルを売り持ちにしていないし、またそうするつもりもない。
事実、われわれが運用している資産は、ルーブルが切り下げられたら、打撃を受ける。
「フィナンシャル・タイムズ」に投稿したのは、G7諸国の政府に警鐘を鳴らすことが目的だった。
ロシア政府は持てる力の限りを尽くして事態を処理しようとしているが、国外からの一層の支援なくしては、成功はままならない。
私はルービン財務長官と話して、事態の緊急性を強く訴えた。
彼は状況を十分認識していたが、他のG7諸国の当局者は大半が休暇でつかまらず、彼の懸念は他の国々には伝わらなかった。
ミッチ・マコーネル上院議員が連絡してきた。
私は彼に、大きなリスクを伴うことになる対ロ支援への共和党の支持を確約する旨の電話をルービンに入れてほしいと迫った。
その日の夜遅く、キリエンコの代理が接触してきた。
キリエンコは、いまなお五億ドルのつなぎ融資を求めていたが、もはやそれは現実的ではなかった。
私は、もしお役に立つのであれば、もっと大きな問題について話し合うためモスクワに飛びましょう、と提案した。
週末の大半はロシアで過ごした。
ラジオ局、エコー・モスクワのインタビューを受け、私の立場を説明した。
また、ロシアのテレビで私の声明が読み上げられた。
私が通貨切り下げを提唱している、あるいは、切り下げによって何らかの得をするといった誤った印象を、これでなんとか正すことができることを願っている、という内容だ。
ガイダルと数回にわたって話をした。
私は、通貨評議会制による問題解決を提唱する一文を作成し、ガイダル梨に送って了解を得た。
たったいま(モスクワ時間で月曜日午前六時一○分)、ガイダルから、ラリー・サマーズ財務副長官と話したが、何の支援も得られなかったと連絡が入った。
ロシア政府は単独で行動しなければならない。
私がこの文章はもはや無意味になったと言うと、彼はとにかく発表すべきだと強く勧めた。
発表はしない。
月曜日(八月十七日)に驚天動地の混乱が起きた。
ロシアは、債務の支払い猶予措置(モラトリアム)を宣言し、最大三五%の実質的なルーブル切り下げとなる、ルーブルの取引幅拡大を打ち出した。
さらにまずいことに、ロシアの銀行が対外債務の履行を禁じられたことで、取引先の外国銀行はパニックに陥り、ロシアの証券を投げ売りした。
デイビッド・リプトンが電話してきて、専門的な説明が欲しいので財務省のためにメモを書いてくれないかと言った。
そのメモを今読み返してみると、かなり支離滅裂だと思う。
私が主張したかったのは、ロシアの危機に対する建設的な解決策を模索するのは、まだ手遅れではないということだった。
G7諸国は、「もし」ロシア議会がIMFの条件を満たすのに必要な法案を可決するならば、通貨評議会設立に必要なハード・カレンシーを拠出することを申し出るべきだ。
ロシア議会がその申し出に同意するか、それとも拒否するか、どちらの可能性もある。
前者の場合、ルーブルの価値は持ち直し、ルーブル建ての債務をきちんと再編することができ、(税金を払わない企業を倒産させる等の)構造改革を実施できるだろう。
ロシアの銀行のほとんどが破綻し、それらの銀行と取引していた国際銀行や国際ファンドは損失を被るだろう。
しかし、ロシア国債はある程度価値を取り戻し、優良な銀行は生き残り、メルトダウンは食い止められるだろう。
後者の場合には、メルトダウンが続くだろうが、その責任は議会が負う羽目になるだろう。
エリッィンは、議会を解散して選挙を行ない、改革を実施することができるだろう。
成功すれば、改革は有権者に支持されるだろう。
たとえエリッィンが難局にうまく対処できなくても、また改革が成功に至らなくても、われわれはできるだけのことをやったといえるし、ロシアの改革の灯を守ることになるだろう。
リスクの大きい戦略ではあるが、手をこまねいていたら、リスクはさらに大きくなる。
この一日間、国際マーケットはロシア危機のため深刻な打撃を受けた。
たとえば、ドイツの株式市場は金曜日に六%下落した。
株が少しでも下落するのにこれほど長く時間がかかるとは、私には驚きだった。
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